1 はじめに

高齢化社会が進み、第三者の介助、介護(以下、介護等といいます。)を必要とする方が、急速に増えています。

従来は「家族」という枠組みの中で、法律外で対応できることが多かったのですが、併せて核家族化も進んだことから、高齢の夫婦のみで生活する方や独り暮らしの高齢者もめずらしくありません。

このような方は、頼れる家族がいないのですから、それに代わって第三者との間で契約を交わす等して、介護等を受け生活していくことが必要です。

そこで、身寄りのない人を、便宜上Aと称し、Aの老後のための法制度にはどのようなものがあるのか、その前提として、そもそも、Aが、何もしないまま亡くなった場合に財産がどうなるかについて、説明したいと思います。

 

2 相続人の不存在

(1)Aには、身寄りがないので、戸籍の記載からも、配偶者、子供等の存在乃至は生存は窺えないでしょう。ただ、例えば、父が死亡した場合、3年間は認知の訴えを提起することができ(787条ただし書)それが認められるとその者が非嫡出子という立場ですが相続人ということになります(死後認知については、死後生殖との関係で説明した弊所ブログを、ご参照ください。https://kawanishiikeda-law.jp/blog/1526)。

このような可能性も払拭できないことから、戸籍上相続人となるべき者が見受けられない場合であったとしても「相続人のないことが明らか」とはいえず「相続人のあることが明らかでないとき(951条)」にあたるとされます。

(2)そして、このような場合を「相続人の不存在」と称します(反面、戸籍上相続人となるべき者の中に長年行方不明の人がいても、失踪宣告等がなされていない場合は、戸籍の記載から「相続人のあることが明らか」なので、ここにいう「相続人の不存在」の規定は適用されません。失踪宣告・不在者財産管理人については、行方不明者との関係で説明した弊所ブログをご参照ください。https://kawanishiikeda-law.jp/blog/1430)。

Aに財産が有って「相続人の不存在」の場合には、利害関係人等の請求により相続財産清算人が選任(952条1項)され、相続債務等を弁済して(特別縁故者がいる場合には相続財産の一部を与えた上で、958条の2)それでも残った財産があればそれは国庫に帰属することになります(959条)。

 

3 遺言による対応とその限界

しかし、せっかくの財産を国に取られてしまうことを快く思わない人も多いでしょう。そのようなときに利用されるのが遺言です。

遺言について、弊所ブログは充実しております。検索数の多い投稿としては、次のようなものがあります。

遺言能力・認知症と遺言無効に関する裁判例

https://kawanishiikeda-law.jp/blog/875

自筆証書遺言・訂正と誤記

https://kawanishiikeda-law.jp/blog/1793

遺言執行・特定財産承継遺言

https://kawanishiikeda-law.jp/blog/2000

遺留分・基礎財産と相続債務

https://kawanishiikeda-law.jp/blog/1208

 

ただ、遺言で出来ることは限られていますし、そもそも、遺言の効力は、Aが死亡した後にしか生じません(遺言で対処可能な事項については、遺言執行との関係で説明した弊所ブログをご参照ください。https://kawanishiikeda-law.jp/blog/1917)。

 

その意味で、身寄りのない人については、生前対応も大きな関心事でしょうから、この点に関する有用な制度を、次回以降、幾つかご紹介します。

 

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