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後遺症による逸失利益については、弊所交通事故専門サイトにて説明しましたが(https://kawanishiikeda-law-jiko.com/234-2)、交通事故で死亡した場合にも同様に逸失利益の賠償が請求できます。ただ、後遺症の場合と大きく異なる点が2つあります。

まず、一方では、死亡の場合は当然に労働能力が0となりますので、労働能力喪失率の計算をする必要がありません。その代わり、他方では、生活費控除を計算する必要があります。生存していれば必要であった生活費の支払を死亡により免れることになるので、その分を損益相殺として控除するということです。

赤本(損害賠償額算定基準に関する弁護士必携の書籍)では以下のような類型ごとに原則的な生活費控除率が示されています。

・一家の支柱 被扶養者1人    40%

       被扶養者2人以上  30%

・男性(独身、幼児等を含む。)   50%

・女性(主婦、独身、幼児等を含む)30%

女性と男性とで20%もの差があるのは、男女間の賃金格差の是正を図っているからです。但し、男性と同様あるいはそれ以上の収入を得ている女性の場合には、男性と同様の生活費控除率を採用することもあります。

 

【事故時57歳の会社員(男性)の例 金沢地判平22.8.31】

逸失利益総額約1973万円≒365万4565円×(1-0.35・生活費控除率)×8.306414(11年のライプニッツ係数)                                                            

この事例に関する情報を簡潔に整理すると以下の様になります。

・妻と二人暮らし

・基礎収入 365万4565円

・事故時57歳→労働能力喪失期間:11年

この事例では、被害者は妻と二人で生活し、その経済的基盤は被害者の就労収入によって支えられていました。したがって、上記類型に照らすと生活費控除率は、40%が原則となります。しかし、被害者は別居中の高齢の養母もそれなりに扶養する必要がありました。つまり、養母の扶養も賠償金で賄わなければならないということです。このような事情から、生活費控除率は修正され、35%と若干低く認定されました。

 

【事故時25歳の会社員(男性)の例 広島地判平10.1.23】

 逸失利益(退職金分を除く。)約6921万円

生活費控除につき30歳までは50%、その後は40%で計算。

この事例に関し公表されている判決文から窺え、また、推測できる情報を整理すると以下の様になります。

・基礎収入:30歳まで平均500万円、31歳以降平均740万円(但し、この点については、公表されている判決文からは明らかでないことから、推測になります。)

・労働能力喪失期間:42年(基礎収入と同じく推測)

・事故時:25歳、独身(ただし、婚姻を前提として女性と交際中)

・原告(請求者):父母(被害者の相続人)

 

逸失利益の計算例は簡略化すると次のとおりです。

25歳~30歳

  500万円×(1-0.5・生活費控除率)×4.32955(5年ライプニッツ)≒1080万円

31歳~67歳

  740万円×(1-0.4・生活費控除率)×13.09(42年ライプニッツ-5年ライプニッツ)≒5810万円

⇒合計約6900万円

 

この事例では、被害者は、ある女性と婚姻を前提とした交際をしており、存命であれば、遅くとも30歳までには同女と婚姻した蓋然性が高いという事情がありました。そこで、生活費控除を、30歳までは50%、その後は40%として2段階の計算を行って判断がされました。なお、子をもうけるか否かは不確定な要素が多く、生活費控除の前提にはされませんでした。

ただ、上記の判断には心情的に引っ掛かるところもあります。

賠償請求の原告は被害者の相続人たる父母でした。判決では将来の妻の生活を考慮して生活費控除を少なくしているにもかかわらず、その賠償金を実際に取得するのは将来の妻ではなく被害者の親だけなのです。親は子より先に亡くなるのが通常ですし、そもそも被害者が親を扶養していたというような事情もありませんでした。しかし、上記生活費控除によれば、将来の妻が受け取る筈の逸失利益を父母が取得してしまうことになります。

そもそも、通常父母は子よりも先に亡くなるので、例えば、父母死亡時点以降の子の逸失利益は受け取れない筈なのですが、子の67歳まで(基礎収入が認められる期間)の逸失利益全額を父母が受け取ることになってしまいます。死亡慰謝料のブログでも指摘したことがありますが( https://kawanishiikeda-law.jp/blog/763  例えば判例は、Aが死亡した場合のAの死亡慰謝料を子Bが「相続」するという法律構成で請求することを認めています。しかし、このような法律構成は、死亡した後に発生する死亡慰謝料を死亡前に発生したと擬制して相続させるという形を採ったものであり、矛盾していると学説上批判されています。)、いわゆる「相続構成」という枠組みの問題点です。

 

 

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