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1 持分と出資の関係

持分は「出資額」に応じた権利ですから、原則として、出資をした者が有しています(後述するとおり、持分の譲渡が可能であれば、出資者≠持分権者の場合が生じます)※。

 

2 社員は出資しなければならないのか(×)

そこで、誰が出資できるのか、先ず、社員は出資なければならないのかが、問題になります。この点、一般的には、団体や社団では、構成員や社員に出資を求めています(民法上の組合に関する民法667条1項、持分会社に関する会社法576条1項参照)。

しかし、医療法には、社員に出資を義務付ける規定がありません(医療法44条2項8号は、定款において「社員たる資格の得喪に関する規定」を定めなければならないとしているだけです。)。実際、行政指導で一人医師医療法人の場合ですら社員は「3人以上置くことが好ましい」とされていましたが、このような医師以外の他の社員に出資を求める必要性もありません。従って、社員になるからといって、出資をしなければならない訳ではありません。出資をしない社員も存在します。

 

3 社員でなければ出資できないのか(×) 

では、逆に社員でなければ出資できないのでしょうか。この点について、かつては異なる見解もあった様ですが、現在では、平成3年1月17日指第1号東京弁護士会会長あて厚生省健康政策局指導課長回答に従い、社員でなくても出資は可能というのが共通の理解になっています。

すなわち、東京弁護士会の「株式会社、有限会社その他営利法人は、法律上出資持分の定めのある社団医療法人、出資持分の定めのない社団医療法人または財団医療法人のいずれに対しても出資者又は寄附者となり得ますか。」という「照会」に対し、厚生省は「医療法第7条第4項において『営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、都道府県知事は開設の許可を与えないことができる。』と規定されており、医療法人が開設する病院、診療所は営利を否定されている。そのため営利を目的とする商法上の会社は、医療法人に出資することにより社員となることはできないものと解する。すなわち、出資又は寄附によって医療法人に財産を提供する行為は可能であるが、それに伴っての社員としての社員総会における議決権を取得することや役員として医療法人の経営に参画することはできないことになる。」と「回答」しています。

つまり、商法上の会社は、出資は可能であるが社員にはなれないということです。それは、社員でなくても、出資は可能ということを意味します。

 

※ 出資額の意味

ちなみに「出資額」が、出資額として決められた額を意味するのか(意味①)、出資として履行済額を意味するのか(意味②)については、争いがあるようです。例えば、持分会社では、会社法576条1項6号は「出資の…価額」という言葉を用いていますが、これは定款記載事項としての概念なので意味①と解されます。ところが、モデル定款第34条によれば、残余財産分配の基準は「払込済出資額」とされています。持分払戻請求権も、残余財産分配請求権と同様と解されることから、モデル定款に基づく持分払戻請求権にいう「出資額」としては、履行済額(払込済額、意味②)と解するのが自然です。

なお、医療法人における出資は、当初は現物出資が多かったと思われます。すると、現物出資の評価に争いがあり実質的には出資がなされたとはいえない場合(形式的には出資されている)をどうするかという問題が生じます。この点、現物出資の対象になった医業未収金等の金額を、持分払戻し請求権の基準として「出資金とみなす」ことができるかが争われた事例があります(横浜地横須賀支部平成29年5月31日D1-Lawは、これらも出資金に含まれると判断しました。)。

 

なお、医療法人の持分に関する法解釈的提言については、弊所代表社員弁護士村上博一の論考・法と政治75巻4号「医療法人の持分に関する法的問題点の検討」をご覧ください(https://kwansei.repo.nii.ac.jp/record/2001123/files/3.0%20%E6%9D%91%E4%B8%8A.pdf

 

医療法人の持分①相続に関連する問題の所在( https://kawanishiikeda-law.jp/blog/3723 )

医療法人の持分②平成22年4月最高裁判決の概要( http://kawanishiikeda-law.jp/blog/3728

医療法人の持分③平成22年7月最高裁判決の概要(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/3749

 

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