遺産分割は、共同相続人の協議によります(民法907条1項)が、それが調わないときは、それを家庭裁判所に「請求」できます(同条2項)。この請求が審判申立で、これがなされると家庭裁判所は「遺産の分割」「審判」をすることになります(家事事件手続法〈以下、単に法といいます。〉39条別表第二12項)。審判には様々な意味がありますが、ここでは「家庭裁判所の終局的な裁判」という意味として説明します。

 

1 判決との違い

(1)公開か否か

 普段耳にする「判決」と「審判」との一番の違いは、判決については、憲法82条1項から審理等の「公開」が求められる点です。

判決は当事者の主張する権利義務の確定を目的とする裁判です。この点、遺産分割においては、被相続人の死亡によって、法定相続分に応じた抽象的な数字的割合としての権利が、既に各共同相続人に承継されており(899条)、当事者の権利義務は既に確定しているといえます。遺産分割審判も、裁判所のする判断なので裁判の一種なのですが、具体的相続分に応じた相続財産に対する価格割合を分配する作業にすぎず、権利義務の確定を目的とする裁判である判決とは異なるため、非公開が認められており、この点が判決との大きな違いといえます(法定相続分と具体的相続分については、https://kawanishiikeda-law.jp/blog/926/ を参照下さい。)。。

 

【憲法82条(裁判の公開)】

裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行うことが定められています(第1項)。

ここでいう裁判とは、権利義務等に関する「純然たる訴訟事件」のことをいいます。このような裁判を国民の目にさらすことで、権利義務等の判断が公正になされるよう定められたものです。審判も裁判の一種ですが、権利義務等に関するものではないので、ここでの公開の要請は働かないとされています。

 

すなわち、遺産分割は「相続人その他の…権利義務の範囲は相続開始によって一応確定していて…その確定した権利の内容を具体化することでしかない」(谷口外編〈伊東担当〉「新版注釈民法(27)相続(2)」有斐閣361頁)ことから、権利義務に対する判断ではないので「非公開」でなしてもかまわないとされます(法33条)。その理由付に疑問を示す見解も多いですが、遺産分割の紛争は家族間の問題なので特にプライバシーの保護が求められ、そのような紛争を非公開の審判で判断することは望ましいと思われます。

 

(2)既判力との関係

審判では、例えば、親Aが死亡した場合の子B、C間の遺産分割において、甲不動産の名義がAのものであった場合、甲がAの遺産であることを「前提」に遺産分割されます。ところが、真実の所有者は自らお金を出して買ったBであったとき、Bは遺産分割審判に納得いかなければ、甲はB自らのものであるとして、もう一度民事訴訟を起こせます。

そして、判決で、甲はB自らのものであると判断されると、権利義務の判断については、「甲はBのもの」という判決が通用し拘束されることになります(既判力)。結果として「甲はAのもの」とした審判は間違っていたものとなり、その効力は失われます。ただ、審判とはその程度のもので権利義務等を確定する訳ではないので、憲法82条1項等の要請に応じる程のものではないとされる訳です。この趣旨を述べたのが、以下の最高裁判決です。

 

最大判昭和41年3月2日(民集20巻3号360頁以下、家月18巻6号153頁以下)
審判手続においてした右前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって右前提たる権利の存在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うに至るものと解される。

 

この理由付けに対する批判も多いのですが、実務はそれを前提に動いています。従って、このような「前提問題」に争いがある場合、前述したBのように「ちゃぶ台返し」が認められるケースもあるので、遺産分割審判の申立の取下げを勧告されることが多く、注意が必要です。

 

(3)遺産共有確認の訴え

このようなBの「ちゃぶ台返し」を封じるには「前提問題」である「甲不動産がAの遺産であること」を訴えにより確定させておく必要があり、その為の訴えを遺産確認の訴えといいます。しかし、既にAは死亡しているので、そのような訴えは過去の法律関係の確認を求めるものとして「訴えの利益を欠く」のではないかという点が問題とされました。現在生存している者達の法律関係として「甲不動産がB、Cの共有であること」を確定させるべきではないかということです。

この点、最1小判昭和61年3月13日民集40巻2号389頁以下は「遺産確認の訴えは、右のような共有持分の割合は問題にせず、端的に、当該財産が現に被相続人の遺産に属すること、換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであって、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもって確定し、したがつて、これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、もつて、原告の前記意思によりかなつた紛争の解決を図ることができるところであるから、かかる訴えは適法というべきである」として、遺産確認の訴えを許容しました。

上記事案及び問題点の指摘に照らして解説すると、遺産確認の訴えは「現に」甲不動産がAの遺産であることを確認するものであって「過去」に関するものではなく、訴えの利益は存在します。また「甲不動産がB、Cの共有であること」の確認を求める場合と比較して、遺産確認の訴えは、甲不動産がAの遺産として「遺産分割の対象」であることまで確定させるものであり、その必要性も認められるということです。

 

2 手続

(1)原則は審判の前に調停へ

遺産分割協議が調わない場合、最終的には、裁判所の「審判」によって決せられますが、それは法の解釈適用により一刀両断的な判断で、勝ち負けが比較的はっきりします。ただ、家族間の紛争解決としては好ましくない場合も多いので、遺産分割審判の申立がなされても、裁判所は職権で調停に付することができる(法274条1項)とされており、この「付調停(フチョウテイ)」という取り扱いが原則です。

 

(2)調停=話し合い

調停とはどういうものか、その法的性質と関連して争いがありますが、紛争解決の主体を当事者とする自由で主体的な決断としての合意と解するのが通説です。調停手続としての調停機関は当事者間を仲介斡旋して利害の調整に努め、当事者間に相当な合意が成立するように公権的に援助する過程にすぎないとされています(梶村外「家事事件手続法第2版」有斐閣28頁以下)。

 

(3)調停が不成立の場合

調停が成立しない場合、審判に移行します(法272条4項)。そして、裁判所は、手続において入手した資料に基づき「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状況及び生活の状況その他一切の事情を考慮して」審判をすることになります(906条)。

 

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