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 相続財産を勝手に処分した場合は単純承認をしたものとみなされ、相続放棄できなくなります(処分は相続放棄をする前後を問いません、921条1号)。ただ、相続人は、相続財産を「管理」も「保存行為」をすることも出来ます(918条1項、921条1号ただし書)。ですから、腐敗しやすい物を換価しても「保存行為」として許され、相続放棄ができなくなるわけではありません。そこで、その限界が問題になります。

 

 

債権取立

債権を取立て回収する行為はどうでしょうか。この点に関する裁判例は、以下のとおりです。

1 最1小判昭和37年6月21日(家月14巻10号100頁)

昭和32年当時で金3000円(現在の価値で約1万6300円)の売掛金を取立した場合に、民法921条1号にいう「処分」があったとしました。

2 東地判平成10年4月24日(判タ987号233頁)

収益不動産から上がる賃料を相続人個人口座に変更することは、民法921条1号の「処分」にあたるとしたものがあります。口座変更されると事情を知らない相続人の債権者が相続財産としての賃料の差押をすることがあることを理由にします。

従って、債権取立行為といっても、単純承認としての「処分」にあたると考えられることがあり、安易に考えないことが大切です。

 

動産処分

  動産は、現金化(換価)が難しい場合も多く、仮にそれが出来たとしても低額に終わることも多いです。また、相続財産の処分に関する規定をあまりに厳密に適用すると、故人の衣類や日用品といった細々したものも捨てることができなくなります。そこで「処分」といっても、若干、緩やかに考えられる場合もあります。これに関する裁判例は、以下のとおりです。

 

1)衣類

一般的に「形見分け」は許されるとされていますが「衣類等」については意外と争われます。

1 松山簡判昭和52年4月25日(判時878号95頁)

和服15枚、洋服8着、ハンドバック4点、指輪2二個を引渡した行為は相続財産の重要な部分を占めるとして「処分」にあたるとしました。

2 東京地判平成12年3月21日(家月53巻9号45頁)

921条3号の「隠匿」にあたるかが争われたのですが、スーツ、毛皮のコート3着、カシミヤ製のコート3着その他残っていた洋服や靴(100足程度であまり使用されず)のほとんど、絨毯、鏡台を持ち帰ったという事案について、「一定の財産的価値を有する…遺品のほとんどすべてを持ち帰っている」として法定単純承認を認めました。

 

ただ、上記事案の相続債務額は上記①で10万円程、上記②で23万円程です。債務がその程度であるが故、単純承認も認められ易かったのかもしれません。とはいえ、上裁判例の考え方は「価格」より「量」を重視しているようなので注意が必要です。

 

2)祭祀

1 大阪高決昭和54年3月22日(家月31巻10号61頁)

遺産の一部から火葬費用、被相続人の治療費を支払うことは、921条1号にいう「処分」にあたらないとされています。

2 大高決平成14年7月3日(家月55巻1号82頁)

上記1の関連として位置づけられるのか悩ましいですが、相続人が、葬儀、仏壇、墓石に関する費用の一部として遺産である貯金を解約して302万円を支払ったところ、被相続人が死亡後年半経過して信用保証協会から約5,900万円の求償債務の存在を知らされたという事案について、相続放棄を認めた判断は注目されます。

 

 

いずれにせよ、「処分」に該当するか否かは難しい判断であるため、相続放棄にあたっては、故人の遺品に手を付けず、弁護士に相談される方が良いでしょう。

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