名台詞「私、おじいさまを殺してしまった」が印象的な夏樹静子のミステリー「Wの悲劇」をご存じでしょうか。場面が二転、三転し、とても面白い作品ですが、実は、今回の民法の相続欠格規定がトリックの核心を占めます。

数多くドラマ化され、調べてみると中心人物の和辻摩子を演じているのは、なんと松本伊代から始まって、川上麻衣子、大河内奈々子、谷村美月、土屋太鳳と結構なメンツです。村上世代としては、薬師丸ひろ子が全盛期で映画版の思い入れが強く、ただこの映画版では劇中劇ということも相まって、トリックの解説も早すぎて、よくわからなかった人も多かったでしょう。

関心ある方は、ブログ記事を読みながら、和辻家の家系図と照らし合わせてみてください(^^;

                                                                                     

 

相続欠格とは

相続欠格とは「相続人となることができない」場合(891条)です。これに該当する者は、何ら手続を要せず、相続人ではなくなります。

 

相続欠格事由

民法891条は「相続人となることができない」相続欠格事由を定めており、各号の要点は、以下の通りとなります。

1号相続人が故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた場合
2号相続人が、被相続の殺害されたことを知って、これを告発せず又は告訴しなかった場合
3号詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた場合
4号詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消させ、又は変更させた場合
5号相続人が、相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した場合

 

ただ、1、2号と3乃至5号の制度趣旨は異なると解するのが分り易いでしょう。すなわち、前者の趣旨は「被相続人らの生命を故意に侵害しようとしたことを理由とするもの」で「相続協同体というべき関係を破壊したことに対する制裁」であり、後者の趣旨は「被相続人の遺言行為に対する違法な干渉をしたことを理由とするもの」で「財産取得秩序を乱して違法に利得しようとしたことに対する制裁」と考えます(最3小判平成9年1月28日・判例解説〈民事篇平成9年度上〉120頁)。

後者については、以前ブログで触れましたので( https://kawanishiikeda-law.jp/blog/910/ )今回は、前者について、若干触れます。

 

1号について「故意に…死亡に至らせ…至らせようとしたため、刑に処せられた」ことが必要です。殺意が必要で、殺意があれば殺人予備罪(刑法201条)に処せられたに過ぎない場合でも1号にあてはまる反面、死亡に至ったとしても傷害致死罪(刑法205条)であれば殺意はないので1号にはあてはまりません。刑に処せられる必要があり、正当防衛や責任能力との関係で無罪になる場合に1号は適用されず、また、刑の全部の執行猶予の場合には「執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う」とされているので(刑法27条)、1号は適用されません。

 

2号について「告発」とは資格を問わず被相続人の死亡が犯罪によると考える者が(刑訴法239条)、「告訴」とは被害者である被相続人の配偶者、直系親族および兄弟姉妹の関係にある者が(刑訴法231条2項)、犯罪事実を口頭・書面で検察官・司法警察職員に申し出ることです(刑訴法241条)。ただ、公訴権は国家が独占しているもので、また、殺人罪は親告罪でもないですから、本号を限定し「犯罪事実が窺えるにもかかわらず捜査機関が動き出していないときに限って」適用すべきというのが、通説の立場です。

ちなみに、2号にはただし書があり「殺害者が自己の配偶者も若しくは直系血族であったときは、この限りではない」として、相続欠格者にならないとされています(直系血族については、こちらをご参照ください、https://kawanishiikeda-law.jp/news/1213/ )。

 

効果

このような欠格事由があることが明らかにならないまま、遺産分割がなされた場合には「相続人となることができない者」を相続人として遺産相続を認めたことになります(このような者を「表見相続人」といいます。)。当該表見相続人が占有している物は相続回復請求権(884条)の対象になります。ただ、代襲相続は認められており(887条2、3項、889条2項)、相続欠格者の子は相続人になることから、そのような場合は実質的な利益調整がされる可能性はあるでしょう(相続廃除には、そのような規定はないので、相続廃除者の子は相続人になりません。)。なお、相続欠格の規定は、受遺者に準用されます(965条)。

 

相続廃除との違い

相続欠格は何ら手続を要せず、相続人ではなくなります。この点、相続廃除が、家庭裁判所への請求等を経て認められる(892条)のと異なります。また、相続廃除と異なり、宥恕即ち廃除の取消し(894条)は明文では認められていませんが、これを類推適用すべきかどうかについては争いがあります。

 

【相続欠格の宥恕(ゆうじょ)】

被相続人が相続欠格者を許し、相続人になる資格を回復させる行為のこと。

 

 

 

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