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質問5 : 私が遺留分侵害額請求をした場合、どのような結果になりますか。

 

回答5 : 旧法下では、遺留分侵害となった遺贈や贈与はなかったことになり、減殺請求をされた者は対象物の権利を返還する必要がありました(物権的効力)。ところが、現在では、遺留分侵害額請求という金銭請求権となりました。

 

 

旧法と現行法

旧法下では、遺留分減殺請求の行使がなされると、法律上の効果が出て、遺留分の侵害となった遺贈や贈与はなかったことになります。「減殺」される訳です。

その結果、対象物に関する権利は、遺留分減殺請求権者のものとなり、減殺請求をされた者(受遺者または受贈者。「相続させる」という形が採られても同様です。)は、対象物の権利を返還する必要があります(現物返還の原則)。

 

例えば、あなたの遺留分侵害額が2,200万円であったと仮定して、お兄さんへ遺贈されたマンション甲(8,000万円)について、あなたがお兄さんに遺留分減殺請求権を行使したとすると、その限度で(2,200/8,000=11/40)マンション甲の権利(物権・共有権)があなたに移転する訳でした。

このように物権・共有権の移転といった効果が直ちに発生するという意味で、そこには物権的効力があるとされていました。

 

ところが、現行法では、遺留分額侵害請求権となり、仮にあなたの遺留分侵害額が2,200万円であったとすれば、その金額をお兄さんに請求できるに留まります。

改正趣旨は、物権的効力を認めると、贈与等の目的財産は受遺者と遺留分権利者との共有になることが多く、円滑な事業承継を困難にするとともに、共有関係の解消をめぐって新たな紛争を生じさせる原因となっていました。遺留分権利者の生活保障や相続人間の公平等の遺留分の趣旨を実現するためには、必ずしも物権的効力を認める必要はなく、遺留分権利者に遺留分侵害額に相当する価値を返還させることで十分と考えられたからです。

 

質問6 : 遺留分侵害額請求を行っても、2,200万円を請求できるだけなのですね。マンション甲の共有持分をもらうことはできませんか。

 

回答6 : 相続法改正時に目的物の現物給付ができるかという議論はされましたが、このような規定の新設は見送られました。あなたがマンション甲の共有持分が欲しいというのなら、お兄さんと話し合い2,200万円の金銭請求権と代物弁済として受け取る以外、方法はありません。

 

 

旧法と現行法

旧法下では、原則として、遺留分減殺請求権に物権的効力を認めた上で、受遺者または受贈者は「減殺を受けるべき限度において…遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる」とされていました(旧1041条1項)。これを価額弁償といい、それは「被相続人の意思を尊重しつつ、すでに目的物の上に利害関係を生じた受贈者又は受遺者と遺留分権利者との利益の調和をもはかる」点から認められていました(最2小判昭和51年8月30日民集30巻7号768頁)。

 

現行法への改正時、これとは逆の形で、受遺者らが、遺留分権利者に対し、遺贈等の目的たる財産を交付することにより遺留分侵害額請求を免れる現物給付の新設が検討されましたが、それは見送られました。受遺者の保護は、遺留分権利者の金銭請求に対し、裁判所が相当の期限を許与することができる形で、されています。

なお、参考までに、現行法1047条を指摘しておきます。

 

第1047条 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。

一 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。

二 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

三 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。

2 第九百四条、第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。

3 前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。

4 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。

5 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

 

 

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