飲酒により、物損だけにとどまらず、人身事故に至った場合、危険運転致死傷罪にならないかが1つの争点になりますが、今回のテーマは、その一亜種で、過失通運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪という長ったらしい名前の犯罪です。画像にもありますが、いわゆる重ね飲みに関するもので、飲酒運転の事実をもみ消そうと事故後にもう一度酒を飲む、するとアルコールを飲んだのが事故前か事故後かでわからないので、捕まらない、起訴されない。有罪にならないという都市伝説のようなお話に関するものです。

 

1 沿革

アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて人を死傷させた場合には危険運転致死罪が適用されますが、重い危険運転致死傷罪の適用を免れるため、救護義務違反をしてでも、事故現場を逃走する運転者もいます。

すると、アルコール保有量自体による「正常な運転が困難な状態」であることの立証は難しくなります。結果として、酒気帯び運転+過失運転致死傷罪となれば、併合罪加重による法定刑の上限は懲役10年6月以下になります。救護義務違反の法定刑の上限は懲役10年以下ですから(道路交通法72条、117条2項)、それを併合加重の対象としても、上限は懲役15年にしかなりません。

ところが、例えば、危険運転として「致死」の上限は懲役20年(逃げ得)「致傷」の上限は懲役15年(逃げてもイーブン)ですから、リスクを負ったとしても、現場を逃走する運転者がいる訳です。ただ、それでは危険運転致死傷罪そのものが機能しなくなることから、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が、平成25年の法改正によって新設されました。その法定刑の上限は、懲役12年ですから、救護義務違反があった場合には併合罪として、この「懲役12年」が1.5倍に加重されるため、懲役18年の範囲で処断されることになります。

 

2 要件

ⅰアルコールの影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が(この状態については、https://kawanishiikeda-law.jp/blog/1077)、

ⅱ運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において

ⅲその運転の時のアルコールの影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、

ⅳその影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をすること

が要件です。

ⅳの発覚免脱行為としては、条文上 「更にアルコール又は薬物を摂取すること」と 「その場を離れて身体に保有するアルコールの濃度を減少させること」 が例示されています。

少なくとも、運転者がⅰの状態であることが必要であることは、重要です。

 

3 刑罰   12年以下の懲役

4 違反点数 酒気帯び運転等+過失運転致死傷罪と同じで、一発免許取消処分です(過失運転致死傷罪については、https://kawanishiikeda-law.jp/blog/1063)。

 

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