自筆証書遺言とは、自筆にて作成される遺言であり、最も身近な遺言です。公正証書遺言と比較すると、以下のようなメリットとデメリットがあります。

 

メリット

方式:簡単です。

画像のとおり、全文自書、日付、署名押印があれば、有効です(968条1項)。

ちなみに、全文自書であればよく、遺言書という表題を欠いてもかまいませんし、鉛筆書きでもかまいません。但し、前者はそれが遺言書かどうか争われる可能性があり、後者は消されてしまうと意味がないので、やはり遺言書という表題を自書するのが望ましく、筆記用具も筆墨、万年筆、ボールペン、マジックペン等簡単には消せないものによることが望ましいと言えるでしょう。

【公正証書遺言】

以下の方式による必要があります(969条)。

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

 

費用:掛かりません。

【公正証書遺言】

証書作成の手数料は、原則として、その目的価格により定められています。

例えば、相続人が1人であれば相続する目的価格が、1,000万円を超え3,000万円までは2万3,000円となります。

但し、相続(または遺贈)における証書作成の場合、合計額が1億円に満たないときは1万1,000円を追加するので、合計3万4,000円になります。また、5,000万円を超え1億円までは4万3,000円となります。(公証人手数料令参照)。

 

秘密:守られます。

【公正証書遺言】

前述した969条1号で、2人以上の証人の立会いが必要とされており、この証人から遺言内容が漏れる可能性があります。ただ、公正証書遺言の原本は公証人役場に保管され「法律上利害の関係を有することを証明したる者は証書の原本の閲覧を請求することを得」とされています(公証人法44条1項)が、この場合における利害関係を有する者とは、遺言者本人が死亡するまでは遺言者のみとされており、推定相続人であったとしても、それまではこれを閲覧することができません。

 

デメリット

検認:必要です。ただ、相続法改正に伴い遺言書保管制度が創設され、そこで交付される「遺言書情報証明書」には、検認不要とされています。

【公正証書遺言】

1004条2項で、公正証書遺言では検認は不要とされています。それは、検認とは、遺言書の保存を確実にして後日の変造や隠匿を防ぐ一種の証拠保全手続であって、公証人役場に保管されている公正証書遺言にはそのような恐れがないためです。

ちなみに、同条3項は「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人…の立会いがなければ、開封することができない」としていますが、これは封印のある遺言書についての定めであって、封印されていない遺言書も検認が必要となります。ただ、検認の有無は遺言書の効力には影響せず、過料の問題が生じるのみとなります(1005条)。

 

保管:不十分です。ただ、この点を補うべく、相続法改正に伴い、法務局による遺言書保管制度が創設されました。

【公正証書遺言】

公正証書遺言の場合、前述したとおり、その原本は公証人役場で保管される外、遺言書検索システムというものが存在し、遺言者の氏名、生年月日、証書の日付、番号などが日本公証人連合会の本部でデータ管理されています。

 

無効になりやすい

遺言は厳格な要式行為として「この法律に定める方式に従わなければ、することができない」とされ(960条)ており、その方式=要件を充たさないと無効になると解されています。その簡便さ故、利用されやすい自筆証書遺言ですが、素人の手のみで作成可能であるため、要式性を欠いて無効になる率も高いといえます。

 

 

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