修正に関する一般論

2分の1ルールといっても、絶対的なものではなく、例外もあります。財産分与の支払義務者に、特別な資格や能力がある場合(医師、弁護士、スポーツ選手等。その他、経営者としての能力もこれに含む場合があります)や就労態様による格差がある場合(航海士、海技士、海外での危険勤務についた自衛官等)が具体例としてあげられています。

 

ただ、2分の1が原則とされている現在、それを大幅に変更するのは、かなりの事情が存在する場合のように思えます。それを示す例として、大阪高判平成26年3月13日判タ1411号177頁(以下、平成26年大阪高裁判決といいます。)を紹介します。

 

本件は、夫が医師で、同居期間17年、財産分与対象財産は約3億円で、財産分与については、夫が3割、妻が5割と主張したものです。

判旨は、以下のとおりでした。即ち「民法768条3項は,当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与額を定めるべき旨を規定しているところ,離婚並びに婚姻に関する事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないものとされていること(憲法24条2項)に照らせば,原則として,夫婦の寄与割合は各2分の1と解するのが相当であるが,例えば,Ⅰ 夫婦の一方が,スポーツ選手などのように,特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが,加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり,通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合など,高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって一定の生涯賃金を保障するような意味合いが含まれるなどの事情がある場合,Ⅱ 高額な収入の基礎となる特殊な技能が,婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて,婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合などには,そうした事情を考慮して寄与割合を加算することをも許容しなければ,財産分与額の算定に際して個人の尊厳が確保されたことになるとはいいがたい。そうすると,控訴人が医師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたことや,医師の資格を有し,婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して,控訴人の寄与割合を6割,被控訴人の寄与割合を4割とすることは合理性を有するが,被控訴人も家事や育児だけでなく診療所の経理も一部担当していたことを考えると,被控訴人の寄与割合をこれ以上減ずることは,上記の両性の本質的平等に照らして許容しがたい。」というものです。

平成26年大阪高裁判決は、上記Ⅰ、Ⅱのとおり、2分の1ルールに例外が存在することを認めながら、互いの寄与割合を夫6割、妻4割に留めました。そして、公刊されている裁判例をみる限り、それほど大きな変更は生じていない気がします(ただ、公刊例でも、財産分与の対象財産を判断する上では、結構配慮がされているようにも伺え、また、公刊されていない生の現状はどうなのか、興味深いところではあります。)。

 

その他の参照例

 

この点、夫名義の財産分与対象財産7600万円(不動産、退職金、ゴルフ会員権など)について「被控訴人(夫)が、一級海技士の資格をもち、1年に6か月ないし11か月の海上勤務をするなど海上勤務が多かったことから多額の収入を得られたことが大きく寄与しており、他方控訴人(妻)は主として家庭にあり、留守を守って一人で家事、育児をしたものであり、これらの点に本件に現れた一切の事情を勘案すると、被控訴人から控訴人に対し、財産分与として形成財産の約3割に当たる2300万円の支払を命ずるのが相当である。」とした大阪高判平成12年3月8日判時1744号91頁があります(以下、平成12年大阪高裁判決といいます。)。

夫の就労態様から、妻に3割しか財産分与を認めなかった例としてあげられますが、これは平成12年の判決です(離婚の一番の原因となった夫のDV暴行があったのは、同7年5月頃)。また、平成12年大阪高裁判決は、DV関連事件として紹介されることが多く、それに関する判断内容をみると少し古い判断のような気がします。

 

続いて、夫の経営能力等を理由に財産分与の割合を夫95%、妻5%としたものがありますが、財産分与の対象財産が220億円と高額で、5%といっても10億円になる意味で、例外的な判断といえるでしょう(東京地判平成15年9月26日判例秘書登載、以下、平成15年東京地判といいます。)。ちなみに、平成15年東京地判の概要は、以下のとおりです。

1 事案の概要

原告夫(経営者)と被告妻は、昭和55年頃、継続的に同居するようになり、昭和58年4月22日、婚姻し、平成9年12月1日以降、別居し、平成13年に離婚と財産分与が訴訟で争われた。この事案では、原被告が継続的に同居するようになった頃には、原告は既に成功した経営者であって、特有財産を多数有していた。そして、財産分与対象財産のかなりの部分が特有財産を原資としていた。

2 裁判所の判断

共有財産の原資はほとんどが原告の特有財産であったこと、その運用、管理に携わったのも原告であること、被告が、具体的に、共有財産の取得に寄与したり、A社の経営に直接的、具体的に寄与し、特有財産の維持に協力した場面を認めるに足りる証拠はないことからすると、被告が原告の共有財産の形成や特有財産の維持に寄与した割合は必ずしも高いと言い難い。…… そうすると、原被告の婚姻が破綻したのは、主として原告の責任によるものであること、被告の経歴からして、職業に携わることは期待できず、今後の扶養的な要素も加味すべきことを考慮にいれると、財産分与額は、共有物財産の価格合計約220億円の5%である10億円を相当と認める。

弁護士法人村上・新村法律事務所