1 遺言執行者の防衛的機能に関する条文は、以下のとおりです(下線は、平成30年に改正された点です。)。

(遺言執行の妨害行為の禁止)

第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。

 

2 ポイント

(1)従前は、1項しか存在しなかったことから、相続人が遺言内容と異なる行為をした場合でも、その相続人の行為は無効とされていました。

例えば、被相続人に娘と息子が存在し、遺言である不動産を娘に遺贈したところ、息子が娘の相続放棄申述書を無断で作成し、当該不動産を息子単独名義にして(根)抵当権を設定しその後抵当権が実行された事案について、最1小判昭和62年4月23日(民集41巻3号474頁。以下、昭和62年判決)は、以下の判断をしました

 

昭和62年判決
民法1012条1項が「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定し、また、同法1013条が「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定しているのは、遺言者の意思を尊重すべきものとし、遺言執行者をして遺言の公正な実現を図らせる目的に出たものであり、右のような法の趣旨からすると、相続人が同法1013条の規定に違反して、遺贈の目的不動産を第三者に譲渡し又はこれに第三者のため抵当権を設定してその登記をしたとしても、相続人の右処分行為は無効であり、受遺者は、遺贈による目的不動産の所有権取得を登記なくして右処分行為の相手方たる第三者に対抗することができるものと解するのが相当である

 

(2)このような状態は「遺言執行者の防衛的機能」といわれていました。遺言執行者がいる以上、対抗要件を具備していなくても権利保護が図られるというものです。

ただ、例えば、昭和62年判決の事案では、遺言がなければ、不動産の2分の1について息子には共有持分が存在し、この持分については受遺者との関係で対抗問題になるとも考えられます(最3小判昭和46年11月16日民集25巻8号1182頁は、遺贈を対抗問題として処理)。しかし、遺言執行者が存在するというだけで息子の処分を全て無効にすることには第三者保護の観点から問題があるとの批判もありました。

そこで、平成30年改正により、上記下線部が追加され、善意の第三者との関係では、遺言執行者の防衛的機能は薄まりました。結果として、例えば、昭和62年判決の事案についても(根)抵当権者が善意であれば息子の持分に関する限度で抵当権の実行は効力を有することになるかと思われます。

 

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