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1 遺言執行者の権利義務に関する条文は、以下のとおりです(下線は、平成30年に改正された点です。)。

(遺言執行者の権利義務)

第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

 第六百四十四条、第六百四十五条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。

 

2 ポイント

(1)遺言執行者が権利義務を有する「一切の行為」とは?

  遺言執行者は、遺言の執行に必要な「一切の行為」をする権利義務を有するとされていますが、その中身について議論があったところ、平成30年改正法により「遺言の内容を実現するため」のものであることが明示されました。

本来遺言は、遺産を処分するものですから、遺言の執行といっても、相続財産のみを対象とし(相続債務を含まない)、例えば、亡Aが不動産甲をBに遺贈する旨の遺言であれば、甲の登記名義をBに移転することが、その内容としての「一切の行為」ということになります(逆に、関係のない第三者に甲を売買換価名義移転できない。)。

しかし、その遺言が清算型遺言(財産を換価・負債を清算の上・残額としての金銭をBに遺贈)であった場合には、当該「遺言の内容を実現するため」執行者は「一切の行為」として、例えば、甲を第三者に売買換価名義移転したり、負債を返済することもできることになります。

➡ 相続財産の占有管理が、遺言執行者のすべき「一切の行為」に含まれるかは、別途解説します。

(2)遺贈について

遺贈とは、遺言による贈与のことで、生前贈与と異なり、被相続人の死亡後(生前贈与は死亡前)に遺言という被相続人の単独行為によって(生前贈与は、贈与者と受贈者の贈与契約)被相続人の財産を贈与することです。そして、例えば、亡Aが不動産甲をBに遺贈する旨の遺言があった場合、Bは甲に対する権利を取得しますが、これを第三者に対抗するには対抗要件(登記)を具備しなければなりません。問題は、どのようにしてBは登記名義を取得するかです。

この点、当該遺言に執行者がいなければ、亡Aの相続人(例えば子)Ⅽが、相続債務者として遺贈を原因とする移転登記義務を負い、Bと共同申請することで遺贈による登記名義の移転を実現することになりますが、遺言執行者Dがいれば、登記義務を有するのは、ⅭではなくDだけということになります。このことを明示したのが、1012条2項です(遺贈の履行は、遺言執行者「のみ」が行う)。

 

 

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