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質問2 : 8年前の留学費は特別受益として遺留分を考える際の対象になりますか?

 

ところで、さきほどの先生の説明の中の「特別受益」というのは、どういうものですか。

先生に指摘されたので、先生が電話をしに部屋を出られた際、本棚の六法をお借りしてパラパラと眺めたのですが、民法1030条には「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日よりも前にしたものについても、同様とする。」とありました。

 

私は、アメリカ留学する際、父から1,000万円貰いましたが、8年以上も前で、相続開始前の一年間の贈与ではありません。当時は遺留分なんて考えてもみなかったので、ここにいう「特別受益」にはあたりませんよね。

 

回答2 : 相続人の受けた特別受益は、①10年間は「遺留分算定の基礎財産額」に含まれ、②「遺留分」を考える際の対象になります。

 

相続人に対する特別受益の時期

残念ですが、あなたの受け取った1,000万円は、そこにいう「特別受益」にあたるので、遺留分額を算定する際にも考慮されます。

 

あなたが、ご覧になったのは古い六法で、相続法は現在改正され、旧1030条は1044条になっています。そして、1044条3項では『相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)とする。」とされています。

実は、改正前相続法の下でも、相続人に対する特別受益は何年でも遡ることができるというのが解釈上の判例の立場でした。それは、相続人間の公平を図る点にあったのですが、あまりに古いものを対象にするのも法的安定性を害するということで、原則10年とすることを明文化したものです。

このように考えた場合、あなたが受けた留学費1,000万円が特別受益にあたるかどうかが問題になります。これは単なる贈与ではダメで「生計の資本としての贈与」であることが必要ですが、お父さんが亡くなった時の財産は8,000万円相当のマンション甲と預金200万円ですから、1,000万円というのは結構大きな金額として遺産の前渡しといえるので「生計の資本としての贈与」にあたるといえます。

 

遺留分額

ですから、遺留分額を算定するにあたって留学費1,000万円は考慮されます。従って、留学費用を前提に具体的に考えると、あなたの遺留分額は、以下の通りになります。

 

遺留分算定の

基礎財産額

相続開始時の財産額+贈与額-債務額
5,200万円

=マンション甲8,000万円+預金200万円+留学費1,000万円

-借金4,000万円

 

遺留分額遺留分の基礎財産額×遺留分の割合×法定相続分

-特別受益額(贈与額) 

300万円

=5,200万円×1/2(※1)×1/2(※2)

-留学費1,000万円

※1遺留分の割合 直系尊属のみが相続人の場合:1/3(1028条1号)

その他の場合:1/2(1028条2号)

※2法定相続分  本件では子2人による相等しい相続分(900条4号)であり、1/2

 

 

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