1 昨日(令和3年1月7日)、関東(都3県)に緊急事態宣言が発令されました。今回は、飲食店を中心に午後8時以降の営業自粛要請がされることになりましたが、それ以前でも例えば東京都では飲食店等に午後10時以降の営業自粛要請がされていましたよね。

だから、この点、あれ?と思う人もいるかと思います。自粛時間を午後10時から午後8時に早めるために緊急事態宣言が必要なの?という疑問です。

関西(2府1県)でも、今日(令和3年1月8日)にでも、緊急事態宣言の要請がされるようなので、少し解説してみます。根拠になっている新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、単に「法」といいます。)の条文は、末尾をご覧ください。重要点に色付けしています。

 

2 法の営業自粛要請に関する立て付けは、法24条9項と法45条2項に分かれます。ポイントは、その前の「第三章」「第四章」という部分で、法24条が新型インフルエンザ「発生時」に関するもので、法45条が「緊急事態措置」に関するものということです。

要は、都の午後10時以降の営業自粛要請は、緊急事態宣言発令「前」の法24条に基づきされていた訳です。ただ、法24条では「必要な協力の要請」ができるとされているだけで、午後10時前の営業自粛要請ができない訳ではありません。実際、大阪での営業自粛要請は、午後9時まででしたよね。

今回の緊急事態宣言については、都が主導したかのようにみえますが、飲食店の営業自粛が中心なら都の判断でもう少しできたのではないかというのが当初の総理の意見のようでした。緊急事態宣言がなくても、都は法24条に基づく自粛要請ができた訳ですからね。

ただ、年末の1000人越えの報道を聞くと、流石にそうもいっていられないということで、緊急事態宣言発令に至りました。

ところが、緊急事態宣言発令「後」がどうなっているかと都のHPをみてみると、飲食店に対する自粛要請は、法24条を根拠にしています。

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1007617/1012690.html

これは、何故なんだろう?というのが、続く疑問です。「緊急事態宣言」の意味ないじゃんっていうところです。

 

3 ここには、法的な問題が1つあり、法45条に基づく自粛要請については、守らなかった者に「指示」「公表」という強い措置がされます(法45条3項、4項)。これを「不利益処分」といいますが、このような処分をするには「手続保障」が必要とされていて、個々になされた「自粛要請」を守らないから「指示」「公表」をしたという建前がいります。

ところが、個々の飲食店にいきなり法45条に基づく自粛要請をするには、費用も莫大ですし、そもそも飲食店を全部探すのでさえ大変です。

そこで、報道やHPで、法24条に基づく自粛要請をした後で、それを守らない個々の飲食店等があればそこに対し改めて法45条に基づく自粛要請をした上で、それでも守らない場合は「指示」「公表」へと向かうということなのかと思います。

 

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第三章 新型インフルエンザ等の発生時における措置

(新型インフルエンザ等の発生等に関する報告)

第十四条 ・・・

(都道府県対策本部長の権限)

第二十四条 都道府県対策本部長は、・・・

 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。

 

第四章 新型インフルエンザ等緊急事態措置

第一節 通則

(新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)

第三十二条 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。

 ・・・

第二節 まん延の防止に関する措置

(感染を防止するための協力要請等)

第四十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。

 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

 特定都道府県知事は、第二項の規定による要請又は前項の規定による指示をしたときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない。

弁護士法人村上・新村法律事務所