最近、役所への届出書類も自由度が増しているみたいで、画像は川西池田オフィスが存在する川西市の出生届です。現在配布はされていないようですが、調べてみると様式さえ備えていればよく、結構色々なものがネット等で手軽に入手できます。ところで、皆さん、藁の上の養子というのをご存じでしょうか。

 

相続ブログと関連させるなら、例えば、遺産分割は「共同相続人」の協議によるのが原則(907条1項)で、相続人かどうかは先ず戸籍で確かめられます。ただ、まれに他人の子供を自分の子供として出生届を出しているときがあります。

 

その動機は様々ですが「藁の上の養子」といわれるものが典型で、子供のいない夫婦が生まれたばかりの子供を養子にする際、それが戸籍上判明しないようにする等のため、最初から自分達の子供として届出るものです(※)。

 

しかし、この場合戸籍上親子と記載されていても、真実の血縁関係はないので実子と扱う訳にもいきません。また、養子縁組は要式行為とされているので「藁の上の養子」を正式な養子とみることもできません(最2小判昭和25年12月28日民集4巻13号701頁以下,判タ9号50頁)。

 

このようなときは、関係当事者の認識が一致する場合も多く、戸籍上子供と記載されている者から、相続辞退や相続放棄といった対応が採られることもあります。

 

ただ、お互いに認識の一致がみられないなら、実親子関係存否確認の訴え(人事訴訟法2条2号)によって解決されない限り、決着はつきません。つまり、被相続人(育ての親)の死亡により、他の相続人(育ての親の実子等)から、実子でないことを主張される場合があるということです。しかし、戸籍上の子供と記載されている者(藁の上の養子)は長年自分が実子であると信じて生活しています。

このような場合、最2小判平成18年7月7日(家月59巻1号98頁以下)は「戸籍上自己の嫡出子として記載されている者との間の実親子関係について不存在確認することが権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法がある」としました。すなわち、このような主張が権利の濫用にあたる場合があるとしています。

確かに、戸籍上の子供と記載されている者と被相続人との間における「実親子関係がない」という主張は正当なものです。しかし、長年にわたり親子として生活してきた事実を勘案すれば、「実子でも養子でもない」という主張を認めることは著しく社会的相当性を欠くという判断が下されたということです。

 

なお、この判決では、①生活の実体があった期間の長さ、②実親子関係が否定されることによりその(養)子及びその関係者が受ける精神的苦痛・経済的不利益、③改めて養子縁組の届出をすることにより嫡出子としての身分を取得する可能性、④実親子関係の不存在確認請求をした側の経緯や動機、目的、⑤その不存在が確定され「ない」とした場合にかかる請求をした者以外に著しい不利益を受ける者の有無、等の諸般の事情を考慮し、権利の濫用にあたる場合か否かの判断をすべきとの一般的基準を示しています。

 

この結果、戸籍上の子供と記載されている者は、本来相続権を有しないにも関わらず、権利の濫用という法理を用いることにより、例外的に相続権が認められたのと同じことになります。これは事例判決ですが、一般的に支持されていることには注意しなければなりません。

 

※【特別養子制度】

現在は「藁の上の養子」といった事態を回避すべく、特別養子制度(817条の2以下)があり、実親の戸籍から子を抜き出して子単独の(中間)戸籍を編成し、そこから養親の戸籍に子を入籍させるといった方法を採ることができることになっています(戸籍法20条の3)。

 

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